私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 ――これなら、キスする雰囲気になっても誰かに見られる心配はなさそう。

 実は今日の本当の目的はそちらにあった。
 二回目のキスをして、雅芳との関係を一歩進める。その中で、彼の今の気持ちを知ることができれば上出来だ。
 そのために思わずキスしたくなりそうなデートスポットを懸命に探したのである。
 思考につられて半ば無意識に雅芳の唇を見つめていた佳穂は、「僕の顔になにかついてる?」と尋ねられてハッとする。

「い、いいえ! なにも!」

 焦って大きな声を出してしまった佳穂に小さく笑って、雅芳はその手を伸ばした。
 当然のように手を重ね、指と指を絡められても、佳穂はもう動揺しない。それくらいには彼の体温が肌に馴染みつつあった。
 きらめく景色を眺めながら、二人は遊歩道の先へゆっくりと歩みを進める。
 水の流れる音は耳に心地よく、背後に聞こえる街のざわめきはあまり気にならない。
 とてもいい雰囲気だった。なのに、沈黙をどこか居心地悪く感じてしまうのは、佳穂によこしまな思いがあるからだろうか。

「……昼間に来たら、また雰囲気が違いそうですね」
「そうだな。今度は昼に来てみるか?」
< 30 / 72 >

この作品をシェア

pagetop