私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
「……はい」

 再び落ちる沈黙。けれど今度は重くない。
 何気なく次の約束をくれることが嬉しくて、佳穂は小さく頬を緩めた。

 そして、やはりこの人が好きだと思う。
 完璧だからではなく、素敵なエスコートで気分をよくさせてくれるからでもなく、佳穂は彼のまとう空気が好きなのだ。
 言葉少なで、ともすれば淡々としているようにも感じられて、けれど他人を見ていないわけではない。
 さり気ない中にもきちんと心のこもった言葉を、振る舞いを返してくれる。
 そんな彼の隣で、その静謐な空気を感じているのが心地よい。
 だから、もっと近くに、と望んでしまうのだ。

〝どうして私なのかなって〟

 初めてのデートで聞いた問いが、胸の中にまた湧き起こる。
 その理由は彼の中で、以前よりも大きく深く成長しただろうか。
 聞きたいのに聞けない。
 むしろ、あのときはどうして聞けたのだろう。
 ……期待していなかったからだ。今は、期待してしまっている。
 それはきっと、自分の中の彼に対する〝好き〟が大きくなってしまったからなのだろう。
 そのぶん、彼の中の自分に対する〝好き〟も大きくなっていてほしいのだ。
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