私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 そう尋ねたのは、彼のそばにいた男性社員だ。
 佳穂は思い当たるふしがあって手を止める。

「明日の朝イチで必要な資料が提出されてない。柏木に頼んでたんだが」

 その答えを耳にして即座に自席から立ち上がった。

「すみません、その資料、私が作成してます! 柏木さんが今日は用事があると言うので私が引き取ったんです」
「引き取った?」

 課長席まで急いでやってきた佳穂に雅芳は強い眼差しを向ける。

「君はほかにも抱えている仕事がなかったか?」

 鋭く指摘されて、しばし言葉に詰まる。

「はい、あります……」

 佳穂が正直に答えると、雅芳の眉間にわずかなしわが寄った。
 しかしそれはすぐに消え、彼は冷静な顔に戻ると、室内にまだそれなりに人が残っていることを確認し、人差し指の動きで無人の打ち合わせブースに佳穂を促した。
 向かい合う形でテーブルに着くと、雅芳はすぐさま口を開く。

「――で? 僕の知らないうちに引き取った仕事はほかにもあるのか?」
「えっと……あとは、宮里さんが担当していた見積書の作成も……」

 佳穂は内心苦い気持ちでいっぱいだったが、懸命に感情を抑えた声で答えた。
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