私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
なにも言葉を返すことのできない佳穂を見やり、雅芳が小さく息をつく。それからおもむろに眼鏡を外すと、そのなににも遮られない瞳を真っ直ぐこちらに向けた。
「……佳穂」
突然名前を呼ばれた佳穂は思わず目を見張る。
隣室に響かぬようにという配慮からだろう、彼の声は極限まで抑えられていた。それでも聞き間違えるはずがない。
――ここは会社なのに、どうして……?
交際を開始してからも、業務中は一貫して〝君〟か〝観月さん〟と呼ばれていたはずなのに。
そんな疑問は、雅芳の次なる言葉で氷解した。彼がわずかに目元を緩めて言ったのだ。
「君が仕事を頑張ってくれていることは、嬉しいと思っている。上司としても……恋人としてもね」
「……っ、はい……っ」
佳穂はテーブルに隠れて見えない膝の上でスカートをぎゅうと握りしめた。
――ここで恋人の顔を覗かせるのはずるい……
雅芳は穏やかな口調で続ける。
「けど、仕事の采配は、上司である僕の仕事だ。もちろん社員同士である程度融通するのは構わない。だが、報告はしてくれないと困る」
「……はい」
「……佳穂」
突然名前を呼ばれた佳穂は思わず目を見張る。
隣室に響かぬようにという配慮からだろう、彼の声は極限まで抑えられていた。それでも聞き間違えるはずがない。
――ここは会社なのに、どうして……?
交際を開始してからも、業務中は一貫して〝君〟か〝観月さん〟と呼ばれていたはずなのに。
そんな疑問は、雅芳の次なる言葉で氷解した。彼がわずかに目元を緩めて言ったのだ。
「君が仕事を頑張ってくれていることは、嬉しいと思っている。上司としても……恋人としてもね」
「……っ、はい……っ」
佳穂はテーブルに隠れて見えない膝の上でスカートをぎゅうと握りしめた。
――ここで恋人の顔を覗かせるのはずるい……
雅芳は穏やかな口調で続ける。
「けど、仕事の采配は、上司である僕の仕事だ。もちろん社員同士である程度融通するのは構わない。だが、報告はしてくれないと困る」
「……はい」