私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
「それに、〝好ましい〟ってなんですか? キスだって全然してくれないし。初めてキスしたときは思わせぶりなことを言ったくせに! 二回目はすっごく冷めた目をして、ああ、キスしたかったのは私だけなんだなって、思うじゃないですか」
「いや、それは――」

 なにやら言い訳しようとした彼を、佳穂は涙の滲んだ瞳で制した。
 雅芳はまるで心臓を掴まれたかのように表情を歪ませて動きを止める。

「八代課長の本音が見えなくて、苦しかった。私のことが好きだっていう熱量が全然感じられなくて……私ばかり本気になりたくなかったんです。だから別れてほしいんです」

 絞り出すように言い切った直後、熱い涙が頬を滑り落ちていった。
 ああ、言った。言ってしまった。恥ずかしい本音まで、全部。
 きっと雅芳も呆れただろう。あれだけ完璧な恋人だったのに、こんな一方的な理由で別れたいと言うなんて。

 ――でも、もういい。終わらせると決めたんだから、もうどう思われたって……

 自暴自棄な気持ちにすらなりかけていたところで、濡れた頬を拭うように触れる指があって、佳穂は瞠目する。
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