悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜

   ◇◆◇◆

 第三王妃の子である第二王子エクバルトは、私がアイリス姉さまの後ろを突いて歩くようになってからというもの、何かと私に文句をつけてくるのだ。
 おそらく、第一王妃の子であるアイリス姉さまや、第二王妃の子である第二王女イルゼ、第一王子ウィリアムに頭が上がらない鬱憤を、私にぶつけているのだと思う。

 その文句の種類が変わったのは、数年前のことだろうか。
 私の体に肉がつくようになり、エクバルト兄さまはそれに対して一々、「だらしない体つき」だと嫌味を言うようになっていた。
 私の体は、アイリス姉さまのような弓張月と評される美しい体つきではない。
 そんなことは、アイリス姉さまの着せ替え人形ができなくなってしまったことで、とうにわかっている。
 しかし、あの次兄は私を貶めるために、そうなじってくるのだ。
 黒い髪も、紫色の瞳も、肉ばかりがついた体も、下賤な本性の表れだと罵倒してくる。

 ただ、たまに()()()()()()こともあり、流石に困ってアイリス姉さまに相談したところ、アイリス姉さまの目が吊り上がり、その日以降、第二王子エクバルトはアイリス姉さまの目の前では話しかけてこなくなったのだ。

 姉さまの目を忍んで接触をしてくるようになっただけなのだが、私はアイリス姉さまにいつもベッタリくっついているので、被害は格段に少なくなった。

 そして、奴はこのたび、大変いい情報を私にもたらした。
 アイリス姉さまが隣国に嫁がされそうだという、今回の件である。

「お前、アイリスを野蛮なマグネリア王国なんぞにやりたくはないだろう。会議の場で、代わりに嫁ぐって言えよ」
「……」
「なんだよ」
「そんなに、アイリス姉様が居なくなったら困る?」

 私の言葉は、どうやら図星だったらしい。
 エクバルトは、カッとした様子で私を睨むと、勝手に私の胸を強く掴み、「このデブが!」と叫んで去っていった。
 不快だし痛かったけれども、情報の内容もタイミングも素晴らしかったので、今回のみ許すことにした。

 第一王妃の子であるアイリス姉さまが居なくなれば、この国は第二王妃ミラベルの勢力の天下だ。
 第三王妃もその子であるエクバルトも肩身が狭くなることは目に見えている。
 エクバルトがあれほど焦るということは、よほど第二王妃が官僚達を押さえ込んでいるのだろう。

 というわけで、アイリス姉さまの嫁入り話を事前に知っていた私は、身勝手にも、それを単独で邪魔したのである。

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