悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
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「ヴィオレッタ。いいから、お父様にもう一度掛け合いなさい。あなたがマグネリアに行くことなんてないのよ!」
「それで、アイリス姉さまが嫁ぐの?」
「そ、それは……」
「マグネリア王国の男は野蛮だって」
「――私は、こんなことを押し付けるために、あなたを拾ったんじゃない!」
叫ぶアイリス姉さまに、私はなんだか胸がムズムズするような、不思議な感覚を覚えた。
よくわからないその感覚を、目をぎゅっとつむり、押さえ込む。
それはそれとして、そういえば、そろそろ伝える時かもしれないと、私は思い立つ。
「アイリス姉さまが私を拾ったのは、姉さまのお母さま――第一王妃を、目覚めさせたいからでしょう」
その言葉に、姉さまがサッと青ざめる。
私は、ああ可哀想だなと思った。
この十八年間、眠り続けている第一王妃クリスタ。
彼女は、その侍女ケイトが私ヴィオレッタを生み落とした数日後に、夫である国王ヴィルクリフに刺されたのだ。
そして、普通であれば命を落とすはずだった彼女は、魔女の血を引く侍女ケイトの魔法により、その命を繋いでいる。
命を落とすことは無いけれども、眠り続けている王妃クリスタとその侍女ケイト。
母に会いたい幼いアイリス姉さまは、魔女ケイトの娘である私に目を付けた。
私に食べ物を与え、教養を与えていれば、もしかしたらこの妹が気が向いて母を目覚めさせるかもしれない。
アイリス姉さまはその一心で、私を囲っていたのである。
しかし、ほかならぬ私がそのことを知っているとは思っていなかったのだろう。
罪悪感に殺されそうな顔をしている姉さま。
だから言いたくなかったのだ。
けれども、しかたがない。
きっとここを逃せば、伝える機会がなくなってしまう。
「ごめん、姉さま。それは、できない」
「……ヴィオレッタ、あなた」
「だから、私が隣国に嫁ぐ」
血の気が引き、もはや白くなった顔で立ちすくむアイリス姉さまの碧い瞳を、私は真っ直ぐに受け止める。
そして、その美しい顔を眺めながら、滑らかな白い頬に手を添えた。
アイリス姉さまは、強くて、美しくて、とてもよわい。
「私は、姉さまの一番の願いを叶えてあげられない。だから、任せて」