悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜


 アイリス姉さまは、その場で泣き崩れた。

 姉さまを泣かせてしまった私は、とても悪い子だ。
 けれども、自分が泣かせたのだと思うと、何か満ち足りた思いもあって、その満ち足りた心のまま、私は姉さまのそばにそっと腰を落とす。

 何か言わなければいけないと思い、ふと、議場で出ていた話題のことを思い出して、口にしてみた。

「私が隣国で殺されたら、アイリス姉さまは助かる?」

 両頬を思い切りつねられた。
 涙でぐしゃぐしゃになったアイリス姉さまに烈火の如く怒られたのは、その二秒後のことだ。
 「こんなに怒られるなら口に出すのではなかった」とポロリとこぼすと、さらに怒られた。
 失態である。

「嫁ぐなら、マグネリア王国を骨抜きしてきて」
「骨抜き?」
「王太子を落として、王族をメロメロにして、周りのみんながあなたの言うことはなんでも聞いてしまうくらい愛されて」
「……」
「それがあなたの使命よ!」
「自国でもできないのに」

 目の前に大魔王が降臨した。
 だから素直にごめんなさいと謝る。

「ごめんなさいじゃ許さない」
「……」
「ヴィヴィ」
「……頑張り、ます」
「うん」

 頷くと、姉さまはぶわっと涙腺を決壊させて、私に抱きついた。
 細くて柔らかいその感触に、これも最後なのかなと思うと、心に重しを抱えたような気分になる。

 こうして、私は隣国マグネリア王国に嫁ぐことになった。

 その使命は、『王太子を落として、王族をメロメロにして、周りのみんなが私の言うことはなんでも聞いてしまうくらい愛される』ことである。

 そもそも愛されるってことがなんなのか、私にはよくわからないけれども、姉様がそう言うのだからしかたがない。

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