敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


「そういえば、ヴィオレッタちゃんは好き嫌いないわねえ」
「マグネリア王国のお食事、とても美味しいです」
「もう! 本当に可愛いんだから」
「本当です。お魚の、お出汁……でしたか? 大好きです」

 初日から私を魅了したのは、マグネリア王国にある巨大湖、マグネリア湖から取れた魚介類だ。
 かみしめるとジュワッと口の中に広がるうま味――うま味というのだと習った――に、私は夢中なのである。
 昨夜いただいた魚介の味わいを思い出して、思わず頬を抑えると、二人の王妃は自尊心を満たされたようなウキウキとした様子で微笑んでいた。

「ヴィオレッタちゃんは本当に上手よね」
「?」
「わたくしたちの心を掴むのが本当にうまいってことよ」
「いいお嫁さんが来てくれてよかったわぁ」
「……あの、それなんですけど」
「何かしら?」
「私、本当にお二人の義娘になれるんでしょうか」

 私が肩を落としたところ、二人の王妃は苦笑いをしながら目をさまよわせていた。

 実は、この国に来てから一ヶ月もたとうというのに、私の婚約者はまだ決まっていないのだ。

 正確には、半月前の家族会議の場で、マイケルが自分の婚約者にすると名乗り出た。
 しかし、メルヒオール以外の王子達の大反発を受けて、私の婚約者決めが保留になってしまったのである。

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