悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
第2章 マグネリア王国
こうして、私はマグネリア王国にやってくることとなった。
供に付けられたのは、なんだか死にそうな老人ばかりであった。
「やぁ、国王様もよぅまたこんな老いぼればかりを集めたもんだぁ」
「あたしゃ、しがない洗濯ババですよ。姫様の面倒を見切れるとは思えないんですがねぇ」
「そう言うけどサァ、マチルダ婆さん。謝礼に目がくらんで片道切符に手を出したのはお前さんだろうに」
「娘夫婦に『子どもの教育には金がかかる』って身売りにされたんだヨォ!」
「何を隠そう、俺も身売りだぞ」
「ジジィババァの身売りたぁ、世の中摩訶不思議だねぇ」
「昔は金の工面といえば、子どもの身売りだったんだけどな」
「世知辛い! いやぁ、世の中、世知辛い!」
だははは、と笑い声が響く馬車の中、私は一人、黒いヴェールを被ったまま静かに外を見ている。
この馬車の中には、自称も他称も老いぼれな侍従侍女達が居座っているのだ。
国王は馬車の数までケチったので、唯一の貴賓用の馬車である私の馬車にも使用人が詰め込まれている。
使用人用の馬車は安物で尻が痛くなるらしく、使用人達は競って私の馬車に乗りたがった。
そして、大木の幹のように図太い神経をした彼らは、静かに外を見る私を他所に、世間話に花を咲かせるのである。
相手は五人、私は一人なので、多勢に無勢。
私は諦めている。
ちなみに、護衛達はなんだか三十代の男が多い。
酸いも甘いもわかったようなプライドの高そうな顔付きの者が多く、私にも老いぼれ組にも話しかけてこない。
時たま、暗い目でこちらを見てくるのですごくうっとおしい。
どう考えても、暗殺専用の部隊である。
あれらは私だけを処理するつもりなのだろうか。
この自称他称おいぼれ侍従侍女達も巻き添えなのだろうな。
多額の謝礼金。
彼らの家族がわかって了承していたのだとすると、鬼の所業である。
ああ、世の中、世知辛い。
頭痛が、痛い。