敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
私はマイケルに連れられて王国ホテルまでやってきた。
その旅路はもう、千年もかかったのではないかと思うほど長いものだった。
「マイク。まだですか」
「まだだよ」
「まだですか」
「まだだね」
「もう降りていいんじゃないですか」
「まだ馬車に乗って三十秒だからね」
「馬車を降りたほうが速いです」
「馬の足に勝つのはやめようか」
「何をしたらもっと早くしてくれますか」
「僕に身売りをしない! ハッ……いや……。だ、男女が仲良くすると、相対的に時間が……早まるとかっ……!」
「それより空間を超えてください」
「異次元に難易度を上げるんじゃない!」
マイケルの苦情を無視して、私は窓に張り付いて、馬車の進み具合を確かめる。
早く早く。
早くたどりつかないと、アイリス姉さまがこの国に飽きて居なくなってしまうかもしれない!