敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 そわそわしながら、もう一度不満でいっぱいの顔でマイケルを見ると、マイケルはなんだかニコニコしながらこちらを見ていた。
 その笑顔はなんだかむずむずするので、腹いせに、左目でウィンクをしながら口に指を立てて、「マイクのえっち」と呟いておいた。
 マイケルはボフッと沸騰したような音を立てて、顔を真っ赤にした。そして何かと戦い始めた。馬車の中という密室に二人きりなので、戦う相手は私しかいないはずなのだけれども、器用なことだ。よくわからないけれども満足したので、私は再度、窓にはりついて馬車の進み具合を確かめる。

 馬車は王都内ということもあり、とても進みがゆっくりで非常に焦らされたけれども、ここで飛び出して騒ぎになると逆に人につかまってしまいそうなので、馬車から飛び出すのは我慢した。

 そして、王国ホテルに着き、すみやかに走り出したところ、私は必死の形相のマイケルに腰から掴まれて捕獲されてしまった。

「何をするのですか」
「君こそ何をするんだ!」
「外でこんなくんずほぐれつ」
「外で一体何を言い出すんだ!!」
「放してください」
「いいから、君はここに居なさい」

 両肩を掴まれての強制エスコートという稀有な体験をしながら、私達はホテルマンの案内を受けつつ、最上階へと進む昇降機に乗り込む。ホテルマンが、この昇降機は魔石で動いていて、とても高価で、王国ホテルと王宮を含め、王都内にも数台しか配置されていないだとか、色々とうんちくを語っているけれども、全然耳に入ってこない。
 私はただひたすら、私を拘束してくる王太子さまに小声で、「意地悪」「意地悪」「意地悪」と連呼するのみだ。
 恨めし気にマイケルを見上げると、マイケルは新たな扉を開いたような、悶えるような目でこちらを見ていた。顔はほんのり上気していて、どうやら私の罵倒に悦んでいるらしい。
 一体なんだというのか。

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