敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。

 それはそれとして、アイリス姉様は初めて、このマグネリア王国での夜を迎えることとなった。

 皆での夕食を終えた私は、自室に戻った後、クローゼットの中にしまい込んでいたトランクに手を伸ばす。
 黒いレースに縁どられた、秘め事を思わせる神秘的かつ悪魔的な雰囲気のあるトランクケースだ。

 私はその真っ黒なトランクケースをベッドの上に移動させ、片隅に輝く金色のカギに手を伸ばす。
 数字のダイヤルが四つ結合しているこれは、正しい数字を四つ組み合わせると開く仕掛けのカギなのだ。
 暗証番号はもちろん、アイリス姉さまの誕生日である。

 トランクケースを開いた中に入っているのは、私の宝物や、アイリス姉様にもらった『隣国の王太子を落とすための必殺アイテム』集だ。
 私がこの国に来るときに、アイリス姉さまと二人で頭を悩ませながら選んだグッズである。

『この品々は、諸刃の剣だと思うのよ』
『アイリス姉さま?』
『敵陣は野獣だらけなのよ。興奮させすぎるのはよくないと思うの……!』

 苦渋に満ちたアイリス姉様の顔を思い出し、私は思わずふふっと口元を緩める。

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