敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
私がむずむずしたような、変な顔をしていると、侍女のリオナとルイーゼは洗髪を終え、タオルを用意し、「ごゆるりお過ごしくださいませ」と言い置いた後、浴室を退室していった。
湯船に目のあたりまで沈み込み、ぷくぷくと息を吐きだしながら私は胸の内を落ち着けると、ザバリと大きな音を立てて、湯船から立ち上がる。
せっかくいい香りの石鹸に洗髪油を使ったのだから、ゆっくり湯を堪能したい気もするけれども、そんなことをしている場合ではないのだ。
いそいそと浴室から出た私は、はやる気持ちを抑えながら、タオルで湯をふき取った後、先ほど選んだ装備品を身にまとい、髪を乾かす。
通常の貴族令嬢であれば、このあたりまで侍女に手取り足取り身づくろいをしてもらうのだろうけれども、私は断っていた。幼い頃から自分のことは自分で行うようにはしてきていたし、侍女以外にも手伝いたいという者が沢山居るからだ。
長い髪を温風で乾かし終わった後、いつも使っている香油の中から、香りが薄いもの選ぶ。香油を手のひらであたため、髪や体に塗り、真っ黒な厚手のガウンを羽織ったら、戦闘態勢は完ぺきだ。
いや、違う。
今日はもうひと手間必要なのだ。
そう思って厚手のガウンを一度脱ぎ、トランクから取り出していたもう一つの小瓶を手に取ったところで、来客があった。
「あら?」
「なぁーん」
「あなたも一緒に来る?」