敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
部屋に忍び込んできた黒いふわふわのご令嬢は、私の言葉にうなずくかのように、足に顔を摺り寄せてきた。
彼女を抱き上げると、満足したように私の腕の中で腰を落ち着けている。
「あ、でも今日は、一緒に連れていくのはよくないわね。あなたには刺激が強すぎるもの」
「にゃ?」
「それにきっと、あなたの大切な飼い主様がまた探していらっしゃるわ?」
「なぅん?」
「あら。知らないふりをするなんて、いけない子ね」
ごろごろと喉を鳴らすミゲルズ=スーパー=キューティフル=ゴージャ(略)もといフローラちゃん。
彼女のいいところを撫でくりまわしながら、ふと、その首元を見ると、いつもの赤い牛皮の首輪に紫色に光る宝石が輝いていた。
その知る人ぞ知る淫靡な輝きに、私は何度か目を瞬いてしまう。
「フローラちゃんたら。のぞき見に来たのね」
「にゃん」
「悪い子だわ」
私は、フローラちゃんを抱いたまま、そっと窓の近くまで足を運び、それとなく隣の棟の一室に目をやる。
確か、あの部屋だっただろうか。
灯りもついているので、やはり部屋の主は起きているのだろう。
「ごきげんよう、野獣殿下」