敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
マイクが複数の感情を乗せた目で、私の躰をなめまわすように見てくる。
あまりにもじっとりとしたその視線に、私は出来心で、ちらりと足元のガウンの裾をひらめかせてみた。
すると、飛び上がったマイケルは何もないところで足をもつれさせ、近くにあった高そうな植木鉢を巻き添えにして地に倒れ伏してしまった。ドシャガシャドカーン!という痛そうな音が廊下に鳴り響き、音を発生させた張本人は、壁に頭を打ち付けて気絶している。
なんということだ。
出来心で、この国の王太子(の意識)を落としてしまった。
まだ中身が見えるほどめくってないというのに。
「どうしましたかーっ!?」
「お、王太子殿下!?」
「なんということだ、高価な植木鉢が全損――!」
「ヴィオレッタ様、そのような恰好でどうされましたか!?」
夜中の廊下の大音量に、夜番の兵士や侍従侍女達が駆けつけてきてしまった。
現場は隣国から嫁いできた王女の部屋の前。
割れた植木鉢の近くに倒れ伏す自国の王太子。
そして部屋の入口付近に立つ、レースの施された真っ黒なガウンに身を包む、就寝前の姿の隣国の王女……。
「……夜這いに失敗したみたいで」