敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 アイリス姉さまは数日前にやってきたばかりだというのに、ずいぶんとマグネリア王国になじんだものだ。
 あんなにもマグネリア王国の男性を怖がっていたというのに、なぜその意見を翻したのだろう。
 しかも、アイリス姉様の態度が変わったのは、来国した翌日のことだ。前日は、怖くて眠れないアイリス姉さまのために、添い寝までして付き合ったというのに、見解が変わるのが早過ぎはしないだろうか。

(アイリス姉さまの様子が変わったのは、ミゲル殿下にお会いして失神した後のことなのよね。一体何があったのかしら)

 あの徹夜明けの日、アイリス姉さまは挨拶と見舞いのため、第二王子ミゲルの私室をマイケルと共に訪問していた。そして、その場で極度の眠気により失神したそうだ。

(あのアイリス姉さまが、マグネリア王国の男性の前で意識を失うだなんて)

 アイリス姉さまはマイケルとミゲルに心配されただけだと言っていたけれども、もしかして、何か呪術的な要素のある言葉を投げかけられたのではないだろうか。
 だって、アイリス姉さまは鋼鉄のおパンツを身に着けてしまうほどマグネリア王国の男性に恐れおののいていたのだ。
 その気持ちを覆すなんて、さぞかし大きな心の変化をもたらす事件があったに違いない。

 ちなみに、この件について私はメルヒオールに相談したのだけれども、彼は「自分の胸に聞いてみるといいよ」としか言ってくれなかった。私の初めての人間のお友達は、とてもドライなのである。

(自分の胸に聞く。自分で考えろってことよね?)

 アイリス姉さまが、マグネリア王国の男性への恐怖をなかったことにするほどの出来事。
 若い女性である姉さまが、男の人への好感度を上げるような事件。
 愛する妹である私にも言えないような、大きな気持ちの変化。

(……恋?)

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