敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 ハッとした様子のご令嬢が、自分の体を見た。
 先ほどまで、彼女を可愛らしく演出していた水色フリルのお洋服が、なんだか悲鳴を上げそうな様子で引き延ばされている。
 その惨状に、どうやらご令嬢は声も出せないようだ。
 無理もないことだ。

「女性として驚きますよね。はち切れそうなお肉……」
「どういう言い方!? 体の大きさが元に戻りかけてるだけに決まってるでしょ!」
「それで、このまま元にもどるおつもりなのですか?」

 ハッとした顔のご令嬢は、背中に背負っている杖を手に取った。
 そして、可愛らしいしぐさで、その杖を宙に向かってくるくると回す。

「私はキュートなマジカル美少女! おうちにか〜えれー!」

 何も起こらない現場。
 真っ赤な顔で悔しそうに震えているご令嬢。
 真顔の私。

「杖にひびが入っているので、おそらく壊れています」
「……なにか言いなさいよ」
「可愛い二十歳前後(アラトゥー)美少女でした」
「もうなにも言わないでよ!!!!」

 なんという移り気。
 しゃべったらいいのか、はたまた黙ったらいいのかわからない。うちの国の第二王子エクバルトのようだ。
 私は知っている。こういうとき、追撃をするとさらにおかしなことになるのだ。だから、ただひたすら黙っておいた方がいいだろう。

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