敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「あの」
「はい!」
「ここに、二つの選択肢があります」
「……はい?」
「あなたが身に着けたいのは、新品未使用の下着でしょうか? それとも、私の使用済み洗濯後の下着でしょうか?」
「後者なことってありえるの!?」
「そうですよね。じゃあこちらで」
私はクローゼットの中に入っていた魅惑のトランクケースから、新品未使用の下着を取り出して、ぴらりと両手で見せつけるように広げる。
その瞬間、ご令嬢が愕然として、口をぱかーんと開けた。
そんなに口を開けて、あごが外れたりしないかしら。
「なによそれ!? そ、そ、そ、そんな破廉恥な!」
「はい。ご令嬢御用達の魅惑のランジェリーです」
「御用達なの!? ぬ、ぬ、布切れっていうか、ただの紐じゃないの、そんなの!!!!」
「この世の不思議を感じる存在ですよね」
私がピロリと広げた下着は、ほぼ紐状態の真っ黒な布切れだった。
大切なところには謎の切れ目が入っているし、胸当てのほうも本当にこれで固定されるのかよくわからない仕様である。
しかし、新品の下着はこれしかないのだ。
私の服は、そもそもの数が少ない。
ヴィンセント王国からは、黒いドレスが三枚、寝間着一枚、普段使いの下着三セットと勝負服(下着込み)を三セットしか持ってこなかった。
マグネリア王国でマイケルが用意していたドレスは、ようやく十着ほどオフショルダー化してサイズ合わせが終わったところだ。下着も、少しずつ数を増やしている。
こんな状況なので、服が余るようなことは一切なく、おろしたての下着はすぐに私が身に着けてしまう。
そも、おろしたての下着を長く放置することなどあるだろうか?
あるとしたら、こういう勝負下着くらいのものだ。勝負をするときまで、擦り切れないよう、大切に新品のまましまっておく……。
「というわけで、これを身につけましょう」
「そんな、そんなの……」
「これなら紐なので、サイズがぴったり合わせられますよ」
私が自分の胸を見た後、ご令嬢の胸を真っすぐに見つめると、ご令嬢はしくしくと涙を流しながら喜んでくれた。
ようやく私の真心が伝わったのだろう。
私が下着を手渡しすると、ご令嬢が困ったような目で私を見た。
「これ、どうするの……?」
「えっ?」
「私、自分で着替えたことなんてないわ?」