敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 おっと、これは想像以上に高貴なお嬢様らしい。

 仕方ないので、本当に仕方がないので! 私はウキウキと心をはずませながら、紐付きの布切れを手に、寝台に入り込む。
 彼女の胸に布切れを当て、背中の後ろの紐を、ちょうちょ結びにしてみた。

 可愛い。
 楽しい。
 なるほど、これが愉悦。

 アイリス姉さまが私の着せ替えを愉しそうにしていた理由が、ようやくわかった気がする。
 そうだ、胸の布切れから上側に伸びている紐を、首の後ろで、可愛くちょうちょ結びにしなければ――。






「ヴィヴィ! あなた、テラス席で待っていてって、言ったのに!」

 バァーン!と音を立てて、私の私室の扉が開く。
 事を成したのは、もちろんアイリス姉さまだ。

 時が止まったかと思った。

 気の置けない彼女が、先ぶれのベルを鳴らすこともなしに、私の捜索のため室内に乱入。
 そして室内では、私が別の裸のご令嬢と同衾し、彼女の下着に手をかけている。

 これは――!

「浮気じゃないんです!!!!」
「なんの話よ!!!!!」
「これは仲のいい友人っていうだけで。私はアイリス姉さま一筋で!!!!!!」
「不倫の言い訳!? えっ、なに。なんでこうなってるの? そ、その方はどちらさま?」

 あわあわと青ざめる私に、アイリス姉さまも困惑の極みと言った様子で、開け放した扉から動かない。
 私の隣に居るご令嬢は、しくしくと泣きながら、「扉を……扉を閉めてくださーい……」と小声で訴えている。
 アイリス姉さまを後から追いかけてきた侍女達も、部屋の中の光景を見て絶句している。


「ヴィオレッタ違うんだあれは勝手に隠密が撮影してきたというか僕の意思によるものではなくて!!!!!!」


 次に駆け込んできたのは、息を切らしたマイケルだ。
 私が描いた可愛いイラスト付きのメモ『誰が撮った魔法画なの〜 :(ᐡ•̥ו̥ᐡ):』を手にしている。
 私が描いたというサインを残していないのに、犯人を私だと断定するなんて、名探偵すぎやしないだろうか。

「きゃああああーーーーーーっ!!!!」
「わぁあああーーーーーーーっ!!!!」

 毛布に身を包んだ裸のご令嬢と王太子から、とどろくような悲鳴が上がる。

 そして慌てたようにマイケルが扉の外に出ていった。

「申し訳ない! いや、わざとではなくて!」
「マイク……」
「わざとではないんだ扉が開いていたから!!!!」
「マイク。私、マイクの暗殺犯を捕まえたんです」

< 162 / 181 >

この作品をシェア

pagetop