敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
国王も第一王妃も第二王妃も第三王子も第四王子も第五王子も、皆が口をそろえて、マイケルを褒め称える。
そして、お前もマイケルに興味があるだろう?と詰め寄ってくるのだ。
毎回濁してきたけれども、実際に私はどう思っているのだろうか。
皆を笑顔にする、立役者。
国と国との諍いすらも、何とかしてしまうのかもしれない、立派な王子……。
「つまらない人」
「……は?」
「あの王子様。一体、何がしたいのかしら。あなたは聞いているのですか?」
鼻白んだ様子のミゲル殿下に、私がゆったりと瞬きをしながら問いかける。
すると、ミゲルはその言葉の意味を咀嚼したのだろう。
サッと血の気が引いた顔になり、わなわなと震え出した。
「ね。知らないのでしょう。表面しか見えないうちは、人間ってつまらないわ」
それだけ言うと、私は再び手に持った本に向き直り、文字を追うことに専念し始めた。
ミゲルは二十秒ほどその場で固まっていたが、我に返ったのか、すぐに「失礼します」と言い、そのまま立ち去って行った。
私は実は、ミゲルが急にやってきて近くに座っていたことに、ちょっとドキドキしていた。
手に持っていた本が、アイリス姉さまからもらった、淑女御用達の大切な本だったからである。
装丁には、『この世界を作ってきた歴史ある技術』という大それたタイトルが刺繍で刻まれている。
しかし、その内容は、私のこれから行う作戦には必要不可欠なものなのだ。
きっとこの本が全てを変えることだろう。
私は本を最後まで読み切ると、ぱたりとそれを閉じた。
うん、決行は今日がいいかもしれない。