敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「……なぜ、ここにいらっしゃるのか、聞いてもよろしいですか?」
いぶかる声に、ようやくやってきたかと、私は寝台から身を起こす。
そこは、マイケル=ミゼル=マグネリア王太子の寝室だ。
私がしどけなく寝そべっているのは、彼の寝台。
ガウンを羽織っているものの、その下は薄手のナイトウェアで、身を起こしたばかりの私は乱れた髪を手櫛で整える。
正直、婚前の令嬢が晒していい姿ではない。
けれども、アイリス姉さま御用達の『この世界を作ってきた歴史ある技術』に載っていた技なのだ。
起き抜けに乱れた髪を手櫛で整える。
これで男はイチコロなのである。
実際に、マイケルも扉の前から動かない。
きっと、技が効果を発揮しているのだろう。
「話があったからです」
「日中、いつでも声を掛けてくださって構わないのに」
「二人で話をしたかったんですよ」
「部屋を確保いたしますよ」
「それではよくないのです」
マイケルは戸惑った様子のまま、寝室の扉付近から動かない。
技が効きすぎたらしい。
なので、寝台から降りた私は彼に近づくと、そっと寝台横のソファに彼をいざなった。
どうするべきか彼も決めかねていたのだろう。
わたしがいざなうままに動かされ、ソファへと腰を落ち着ける。
そして、その左隣に、私も一緒に座ってみた。