敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「申し訳ございません、話を掴みかねます。どういった理由で、その、契約結婚と?」
「あなたと恋仲になった男を、愛人に据えてくださって構わないということです」
「あいじん」
「はい。私とあなたの結婚は、国を結ぶ大切な架け橋です。その形さえ残れば、自由にお過ごしいただいて構いません。そのことで、あなたに不利益がないようにいたしましょう」
「本当に、ろくなことを言い出さない……」
「えっ?」
「いえ。……その」
正直、『生涯を懸けてあなたを幸せにする』とか、『一生あなただけを見つめます』とか、本でよく見るような甘すぎて吐き気がするようなことを言われるのだろうなと思っていた。
吐き気はするけれども、姉さまの指令をこなす第一歩ではあるので、まあ仕方がないかと思っていたのだ。
しかし、これは予想の斜め上である。
契約上の結婚。契約結婚。
マイケルはどうやら、厚意のつもりでこれを申し出ているようだ。
悪気はない。
しかし、結果は悪い。
これはつまり、今後一切お前には興味を抱かないと言ったに等しい行為である。
今後一切、名目上の妻に過ぎないお前には興味を抱かない。
メロメロに堕ちるなど、笑止千万――。
「なるほど」
ぱさり、と黒いガウンをその場に払いのけた。