悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
女の子は私の手を引いて、王宮の中に入っていった。
そこは煌びやかな部屋で、大きくなってから思い返すと可愛らしさもあるのだけれども、その可愛らしいさを感じ取ることはこのときの私には難しかった。
部屋の入り口で身を固めている私に、彼女は不審そうな目を向けてくる。
「何してるの? こっちに来なさいよ」
「……」
「何か問題があるの?」
「汚し、たら、あの」
怒られるから。
最後まで言わなかったその言葉を正確に読み取った彼女は、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「王女のあなたが部屋を汚して、誰が怒るって言うのよ」
「……みん、な」
「あなたの周りにいるのなんて、使用人達ぐらいじゃない。片付けるのが彼らの仕事でしょう!」
「……」
「もう、いいわ。ほら、これを食べて、飲んで」
「……?」
「あなた、このままお風呂に入れたら倒れちゃいそうじゃない。先に少し食べなさいよ」
机の上に用意されているのは、サンドイッチのようだった。ハムときゅうりの挟まれたそれが、キラキラした装飾のついた真っ白なお皿の上に、五切れほど置いてある。
隣にはコップが一つと、レモンの浮かんだ水の入っている水差し。
あんまり綺麗なお皿に載っているので、手を出しづらくて、ただひたすらお皿を見つめていると、女の子は「いいから、席につきなさい」と私を椅子に座らせた。
そのまま動かない私に痺れを切らしたのか、彼女は私の目の前でコップに水を注ぎ、その場で飲み干す。
「これで、心配ごとはなくなった?」