悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
眉根を寄せる彼女に、私は首を振った。
どうやら彼女は、私が毒を疑っているとでも思ったらしい。
恐る恐る、彼女が机に置いたコップに手を出し、水を注いで一口飲む。
レモンの入った水は、あんまり美味しくなかった。
でも、それを言うと怒られる気がしたので、私は口をつぐみ、もう一口水を飲む。
喉が潤ったので、少しは声が出そうな気がして、私は女の子に話しかけてみた。
「あの」
「……何よ」
「みんな、あなたのこと、好きだから。お水も、危なくないって、聞いて、知ってる」
「みんな?」
「いっぱい、いる。風にも、水にも、木にも」
どうしてだろうか、女の子の顔色がさらに白くなっていく。
でも、とりあえず、これを言わなければ。
「お姉ちゃん、ありがとう」
それが、第三王女の私と、姉さま――国王と第一王妃の血を継ぐ正当なる王位継承者、第一王女アイリス=フォン=ヴィンセントとの出会いだった。
当時八歳と、十歳の少女の邂逅である。