敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。

「私は、あなたの好みだと思いますよ」
「何、を……」
「マイケル殿下は、面倒くさい人が好きですよね。私はめちゃくちゃ面倒くさい人間です」
「ああ、それはまあ、その?」
「あと、あなたの生き方を知った上で、夫になったら面白そうな人だなと思っています」

 え、と固まった彼に、私はにっこりと微笑む。
 しばらくして、私が言った内容が頭に染み渡ったのだろう。
 じわじわと顔が赤く染まっていったので、私はそっと彼の耳元に口を寄せた。

「最初は契約結婚とやらでもよいですが……」

 そのうち、後悔すると思いますよ。

 そう囁いて、耳にふっと息を吹きかけた。

 そして、恐る恐る上目遣いで相手の様子をうかがってみると、いつも笑顔一辺倒だった彼が、顔を真っ赤に染め、悔し気に顔を歪めて、涙目でこちらを見ていた。
 うん、よいよい。
 私が思い描いたとおりの、美味しそうな王子さまの出来上がりである。

「あ、あなたはどこでこんなことを学んだのですか」
「ある人で練習しました」
「!? ど、どこの誰です!」
「気になりますか?」
「!」

 もちろん相手は、アイリス姉さまです。

 そう言おうと思ったのだけれど、私は口をつぐむことにした。
 どうやら思った以上に私のやったことは効果が出すぎたらしく、彼は口元を押さえたまま、涙目で本当に恨めし気に私を睨んできていたからだ。

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