敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 そんなこと思いながら、私はふっかふかな寝台の上で気持ちよく就寝し、その日、とてもいい夢を見た。
 この国のみんなに愛されて、王太子は私にメロメロになっていて、なんでも言うことを聞(・)い(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)夢である。

 実は、みんなが何でも言うことを聞いてくれるようになったら、お願いしてみたいことがあるのだ。
 それを言うのが私の望みで、それだけのために、私は生きている。

『ほんの少しの間でいいから、私の目の前に、アイリス姉さまを連れてきて』

 多分叶わないと思うけれども、言うだけならきっと自由だ。
 別に叶えてくれなくてもいい。
 アイリス姉さまの指令は『聞いてくれる』ようになることであって、『叶えてくれる』ようになることではなかったし。
 それに、誰かにそれを言うことすら許されない今よりも、ずっとずっと、幸せのはずだ。

 こうして、それを口に出す日を夢見て、私はすやすやと眠りをむさぼるのだ。

 ちなみに、枕元には、アイリス姉さまの髪の毛が入ったお守りを置いている。
 姉さまが寝ている間に勝手に毛先を失敬したのだ。
 多分、ばれたら死ぬほど怒られると思うから、この秘密は墓場まで持っていくつもりである。


   ~✿~✿~✿~

 このとき、私は知らなかった。
 私がやったことは、私が思った以上に、マイケルの心に火をつけていたらしい。

「なんなんだ、あの女……くそっ、練習相手って誰だ……!」

 その後、マイケルは私の『練習相手』を調査すべく、ヴィンセント王国に諜報員を放ったけれども、その相手は見つからず、私の知らない所で地団駄を踏んでいたらしい。

 そして、そのことを私が知るのは、結構先のことになる。
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