悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
それからというもの、アイリス姉さまは、私の世話を焼くようになった。
私を家来のように常に連れ歩き、便利な小間使いとして命令を出す。
私が着ている服は姉さまのお下がりか、姉さまよりも一段も二段も粗末なもの。
ただ、食事のマナーがなっていないと遣いづらいと言われ、いつも姉さまと食卓を囲っていた。
お客様の相手をするときも、勉強をするときも、ずっと姉さまのそばにいるように言われ、そのとおりにしていたので、勝手に知識が頭に入ってきた。
たまに、「私にもストレス発散が必要なの」と言いながら、アイリス姉さまは人払いをし、私と二人きりになる。
そうして、姉さまは自分の服を取っ替え引っ替え、私に着せるのだ。
姉さまの服は装飾が多く、着替えるのは大変なのだが、姉さまが楽しそうにしているから、きっとこれは楽しい時間なのだろう。
そうして、第一王女の腰巾着として育った私が十八歳になったその年、ヴィンセント王国と最も仲の悪い隣国マグネリア王国から使者が来た。
使者が持ち込んだのは、両国の融和のために、マグネリア王国の王子とヴィンセント王国の王女の婚姻を結ばないがとの提案だった。
議会の場は紛糾した。
「なりません! 憎きマグネリア王国と融和など!」
「マグネリアの男は野蛮で奔放だと言います。そのような場所に、我が国の王女を差し出すなど、笑止千万」
「しかし、婚礼費用としてゼディア鉱山の採掘権を十年分譲渡するとある。これは切り捨てるのは惜しい利権です」
「我が国の王女を差し出した場合、その扱いはひどいものであることは想像に易い。暗殺されでもしたらどうするのです」
「――それを理由に、攻め入ればよいだろう」
そう告げたのは、この国の国王、ヴィルクリフ=フォン=ヴィンセント。
この国の主人は、この縁談を受け入れるつもりなのだ。
であれば、家臣達はそれに従うより他はない。
反対派の家臣達は、青ざめた顔をしている。
「……ですが、王女方のうち、一体誰が」