悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜


 この国には三人の王女が居る。

 第一王妃の子にしてこの国の王太子、アイリス第一王女。
 第二王妃の子であるイルゼ第二王女。
 そして、第三王女である私、ヴィオレッタである。

「第一王女が行けばよい」

 その冷たい声音に、言われた内容に、アイリス姉さまの体がビクリと強張る。

 その冷たくも粘着質な何かを孕んだ声の主は、第二王妃のミラベルだ。
 第一王妃の唯一の子であるアイリス姉さまを、いつも目の敵にしている人。

「この国には、我が息子ウィリアムと娘イルゼがおる故、後のことは任せるがよい」

 シン、と静まり返った議会の場に、アイリス姉さまは苦虫をかみつぶしたような顔をする。

 この国の第一王妃は、この場には居ない。
 ずっと眠り続けているのだ。

 ここ十年以上、王を支えてきたのは第二王妃と第三王妃。
 特に、第二王妃ミラベルの言葉に逆らうことのできる者は少ない。

 アイリス姉さまはいつだって頑張っているけれども、まだその根回し、権力的背景は第二王妃ミラベルに及ばない。
 なので、基本的にアイリス姉さまが第二王妃ミラベルの意見をねじ伏せるためには、理屈で押さえつける必要がある。

 しかし、この件は、アイリス姉さまには分が悪い案件だ。
 一見、王太子であるアイリス姉さまを嫁がせるのは愚行にも思われる。
 しかし、アイリス姉さまは第一王女が不在で後ろ盾が弱いので、姉さまが隣国に嫁ぎ、第二王妃の子である第一王子ウィリアムに王太子を譲るほうが国が安定すると思っている勢力もいる。

 第二王妃ミラベルを、理屈で制するのは容易ではない。

 この場で第二王妃ミラベルの意見を覆すならば、権力にものを言わせるしかないのだ。
 そしてそれができる人物は、普通に考えるならば、ただ一人。

「お父様は、それでいいのですか」

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