悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
アイリス姉さまも、そのことをわかっているのだろう。
姉さまは立ち上がり、毅然と首をあげて父王に物申した。
しかし、自身の最初の子である第一王女に対して、国王ヴィルクリフは暗い視線を投げる。
そこに込められている黒い感情に、私は目を伏せた。
どうやら、第二王妃ミラベルに物申すことができる唯一の人物は、口を出す気はないらしい。
硬く握られているアイリス姉さまの右手を見ながら、私はその場で立ち上がった。
「わたくしが嫁ぎます」
頭から黒いヴェールを剥ぎ取り、その場で姿を見せた私に、議場はざわめいた。
いつも私は姉さまの後ろを歩くとき、上半身を隠すような黒いヴェールをして過ごしていた。
私の姿を見ると、苦い顔をする人が多かったから。
けれども、今はその人を威圧する雰囲気を出すべきときなのだろうと思ったのだ。
物は使いようだ。
今も、私を見て皆が蒼白な顔をして黙り込んでいる。
黒髪に長いまつ毛、大きな紫色の瞳。
この国では忌避される肉付きのいい体に、ぽってりとした唇。
毒婦と罵られた第一王妃の侍女ケイトの娘。
国の醜聞を体現した、落ちこぼれの第三王女ヴィオレッタの姿に、皆が慄いている。
「わたくしが、隣国マグネリアに嫁ぎます。……呪われた子であるわたくしを、自国から追い出し、マグネリア王国に送り付ける。我が国は、婚礼費用としてゼディア鉱山の採掘権を手に入れる。王太子をアイリス姉さまから変える必要もない。皆様も満足の結果ではございませんか?」
周囲を見渡すけれども、誰も意を唱えない。
呪われた子。
そう、ここに居る者達は皆、私のことを呪われた王女だと思っているのだ。
だから、隣国に嫁がせる王女の話をしている最中、誰も私の名前を出さない。
居ないものとして扱われる存在。禁忌の子。
それが私、王女ヴィオレッタなのだから。
ふと、父であるはずの国王ヴィルクリフを見ると、こちらもまた苦虫をかみつぶしたような――いや、激しい怒りに身を焦がさんばかりの目でこちらを見ていた。
あと一押しか。