敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「今日から王太子妃としての授業が始まったと聞きました」
「よくご存じですね」
「異国の言葉での授業は難しいでしょう。我が国が王族に求める水準は高いと思いますし」
「楽しい時間でしたよ」
「……そうですか? それならばよかったのですが」
つまらなさそうにしている目の前の男に、私は内心笑ってしまう。
この男は、前回話をしたときのことを根に持っているのだ。
信望する兄を貶め、兄を最も知る人物が自分ではないと知らしめた私に、わだかまりを抱いている。
だから、私が順風満帆にすごしているのが癪に障るのだろう。
とはいえ、彼はそのわだかまりがあるにもかかわらず、何か私に話したいことがあるらしい。
ミゲルは視線をさまよわせた後、ようやく決心したようなそぶりで私に尋ねてきた。