敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「つかぬことをお聞きしたいですが」
「はい」
「……黒いもの、を、見かけませんでしたか?」
私が今日も今日とて黒装束なミゲルを凝視すると、「私ではありません」とミゲルは即座に答えた。
私が今日も今日とて黒装束に身を包む自分の体の方を見ると、「あなたでもありません」と返事が返って来たので、ならまあいいかとミゲルに視線を戻す。
「何かお探しなのですか?」
「そうです。今も使用人達に頼んで、探してもらっていて」
「落としものでしょうか」
「落としもの、というよりは、逃げ出した、というか」
「……ああ、もしかして」
「何かご存じなのですか!?」
わたしが右手の人差し指をあごにあてながら、焦らすようにそう言うと、ミゲルが真正面から食いついてきた。
素直なことだ。
あまり素直すぎるのも、食指が沸かない。
それに、こんなにまっすぐで、王族の一人としてやっていけるのだろうか。
「『可愛いにゃんにゃん、あの黒い女は一体何なんだよ?』」
「!?」