敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
ミゲルの黒猫は成猫なので、割と重い。
早く受け取ってくれないと、本より重いものをあまり持たない私の腕がプルプルしてしまうのだけど。
不満げに上目遣いで見つめると、ミゲルがごくりと唾を飲み込んだ音がする。
結局、横から不自然な動きで割って入ったマイケルが無理やり黒猫を私から奪い、ミゲルに猫を渡して、彼をこの場から追い返してしまった。
重かったので助かったとお礼を言うと、マイケルは「ああいうのはいつでも私を頼ってください」と笑顔で答えてくれた。
目が笑っていない気がするけれども、まあ面倒くさいので放置でいいだろう。
「ところで、マイケル殿下は何か私に御用があったのですか?」
「え?」
「何度も私の近くを往復していらっしゃったから」
なんの気なしにそう言うと、愕然とした碧い瞳が返って来た。
心臓が、トクンと鳴るのを感じる。
あれは彼が無意識にやっていたことだったのか。
そしてどうやら、これは彼の心を斜め後ろから貫く刃になったらしい。
しっかりと捕まえた上で、問い詰めなければ。