敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
私はするりと彼の左腕に絡みつき、その手の指に右手の指を絡める。
ビクリと体を震わせた彼に、私は身を寄せながら、にっこりと毒のない笑みを浮かべた。
「もしかして、同じことを誰かにされましたか」
「……っ、わ、私、は……」
「私は、嬉しいですよ」
青ざめていく彼に、つい頬が紅潮してしまう。
なるほど、彼はきっと、嬉しくなかったのだろう。
怖くて、恐ろしくて、それなのに自分も同じことをしてしまって、怖がられたのではないかと青ざめて、逆の立場から考えて、自分がかつて相手にやったことの重みを思い知って。
それが、目の前で繰り広げられている。
アイリス姉さまと同じ碧い瞳が、暗く染まっていく。
こんなに愉しいことが、他にあるだろうか。
「いいですよ」
「何、が」
「もっともっと、私に、執着してください」
そうして、メロメロになってくれたら、もっと嬉しい。