悪役王女の数奇な嫁入り 〜契約結婚でもいいですが、そのうち後悔すると思いますよ?〜
私はそっとアイリス姉さまに身を寄せ――姉さまに触れないものの、お父様から見ると、寄り添っているように見える角度で――ゆっくりと瞼を上げ、上目遣いで国王を見ながら、口を開いた。
「わたくしを……ここから引き剥がしたほうが、お父様のお心に沿うのでは?」
「――貴様! 所詮は魔女の娘か!」
会議机を殴る音に、議場に居る一同は視線を逸らす。
そして、アイリス姉さまは、驚きのままに私を振り返った。
小さな頃はわからなかったけれども、今の私は知っているのだ。
私が憎まれ、それだけではなく、腫れ物に触るような扱いを受けている理由を――アイリス姉さまが知らないそれを、知っている。
国王を動かすには、私が受けてきた苦役の要因、その逆鱗を、ほんの少しなでてやるだけでいい。
「お父様も、異論はないようですね」
「ヴィオレッタ!? 何を……お、お父様、お待ちください!」
「この女狐が、どこへなりとも行け!!」
アイリス姉さまの静止も虚しく、会議は終了した。
静まり返った議場の中、国王だけが大きく音を立てて立ち上がり、その場を去っていった。
青ざめて立ち尽くすアイリス姉さまの横で、私は肩をすくめて再度席に着く。
その様子を、第二王女イルゼは退屈そうに横目で見て、欠伸をした。