敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
マイケルは嵐の中にいた。
動揺と後悔と執着と劣情の狭間というやつである。
「なんなんだ、あの女はっ……」
違う、そうではない。
あの女のことを考えてはいけないのだ。
あの艶やかな黒い髪も、ぽってりとした赤い唇も、腕に押し付けられた扇情的な肉感も、マイケルを惑わす悪魔のものだ。
そう思うのに、ふとした瞬間に感触が思い出されて、耳元で囁かれた声が脳裏に蘇って、マイケルは「うわぁあああ」と叫びながらうずくまってしまう。
そうこうしているうちに、両親がやってきて、強制的に休みを取らされてしまった。
「父上、母上方! 私は忙しいほうがいいんです!」
「……業務に支障が出ているから」
気まずそうにそう告げてくる父王に、何か言えることがあっただろうか。