敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
確かに、今のマイケルは日中ぼんやりしていたり、急にうずくまったりするので、あまり事務が進んでいない。人と会うのも憚られる。
人と会うことが、マイケルの生き甲斐だったというのに!
「なあ、マイケル。お前は元々働きすぎだから、久しぶりに長期休暇を取りなさい」
肩を落とすマイケルに、母である第一王妃は去り際、「マイケルは初恋で、身を持ち崩すタイプだったのね」と呟いて去っていった。
それがまたマイケルの心を突き刺してくる。
(初恋!? 恋ってなんだ、僕があの女なんかに……!)
そうしてふたたび思い浮かぶのは、大きな瞳にすっと通った鼻筋、白い肌に、赤い唇で紡ぐマイケルの愛称を呼ぶ甘い声。
「うわぁああああ」
こうして、マイケルは気持ちの乱高下に振り回されながら、部屋の中に引きこもっていた。
目を開けても目を閉じても、起きていても夢の中でも脳裏に表れる黒髪の敵国第三王女に、マイケルは疲労を重ねていく。