敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
ふと、彼女が来てからというもの、そういったことをしてこなかったことに気が付いた。
彼女に対してしたことと言えば、歓待し、国を案内し、官僚達と少しずつ顔合わせを行ったくらいだろうか。
「にゃ」
ふと、部屋の中に黒猫が居ることに気が付いた。
長毛種の、成猫の黒猫である。
瞳は金色で、淡いピンク色の首輪をはめている。
これは確か、三つ年下の弟ミゲルの飼い猫だったはずだ。
名前は長くて覚えられなかった。
マイケルにはあまりなついていなかったはずのその猫が、マイケルの部屋に居るのはなぜだろう。
そう思って黒猫を見ていると、黒猫はもう一声「にゃ」と鳴きながら、身を起こして寝台の上に居るマイケルの膝に乗って来た。