敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
「恋とか、愛は、まだわからないけど」
「……」
「ヴィオレッタと、話がしたいな」
マイケルは、心の靄が晴れたような気持ちで、頬を緩めた。
身支度をして、朝の外の空気を吸って、ちょっと熱めの紅茶を飲んだら、彼女に会いに行こう。
今ならきっと大丈夫。
そう思ったところで、黒猫がにたりと目を細めた。
金色の瞳が、弓張月を描いている。
「今でも大丈夫ですよ?」
……。
「え?」
「お話したいなら、ここでお話しましょう?」
マイケルは、辺りを見渡して、自分以外に室内に誰も居ないことを確認する。
朝で、マイケルは寝起きなので、当然のことだ。
まだ、洗顔の水を用意する侍従に声掛けすらしていない。
目の前に居るのは、マイケルの胸板にすりすりと身を寄せている長毛種の黒猫だけ。
「ほら、マイク。何かしゃべってください」