敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
催促するように自分の右手に絡みついている黒猫に、マイケルはだんだん体温が上がってくるのを感じる。
黒猫が、人の言葉をしゃべっている。
それ自体も相当おかしい。
しかし、それよりなにより問題なのは、喋っている主体がどうみても間違いなくヴィオレッタであることだ。
「ヴィ、ヴィ、ヴィ」
「ヴィオレッタです」
「なんで!?」
「どうしてお部屋にこもってしまわれたのですか」
「え? な、何……」
「お声を聞きたくて、会いにきてしまいました」
「え、いや、でも。ね、猫……」
「人の姿だとここまで通してもらえないので、仕方がなかったのです」
「……ちょっとやっちゃいましたみたいなニュアンスで……できることでは……ないと思う……」
「あら、本当に元気がないですね。マイク、大丈夫ですか?」
黒猫は心配そうに首をかしげている。
しかしマイケルは動けない。
完全に思考停止している。
そして、不満そうな様子の黒猫にぺろりと顔をなめられて、マイケルの脳は強制的に再起動することとなった。
「君は、何をしているんだ!」