敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。

 ヴィオレッタがマイケルの寝室に侵入している同時刻。

 第二王子ミゲルは身支度を済ませ、王宮の廊下を歩いていた。

「……フローラ、いないのか? フローラ……」

 彼は朝起きて、ミゲルズ=スーパー=キューティフル=ゴージャス=シルク=フローリ(略)が自室に居ないことに気が付いた。
 そのため、いつもよりも早くに朝の支度を済ませ、愛猫を探しに出かけたのである。

 早朝なので、あまりうるさくすることもできない。
 小声で愛猫を呼びながらいろいろなところを歩いてみるが、どうにも愛猫を見つけることができなかった。

(もしかして、あの第三王女のところに)

 先日、愛猫がヴィオレッタの膝の上でくつろいでいたことを思い出し、ミゲルは眉根を寄せる。

 ミゲルの愛猫は本来、このように部屋を脱走するような猫ではなかった。
 初めての脱走が、先日のことである。
 普通に考えれば、あの女が何かしたのだろう。

(あの女、一体なんなんだ)

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