敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
脳裏にヴィオレッタの姿が浮かび、心臓が跳ねて、ミゲルは慌てて首を振る。
敵国ヴィンセント王国から嫁いできた第三王女。
弓張月のような女がもてはやされるかの国から来た女は、この国でも見ないような豊かな魅力を放つ悪魔だった。
ミゲルの名前を呼ぶぽってりとした赤い唇も、愛猫を手渡すときに見せつけてきた魅惑の双丘も、彼女が手慣れた悪女であることを指し示している。
(私は、誘惑には負けない!)
二つ年下の弟メルヒオールは既に堕ちているようだし、三つ年上の兄マイケルも、彼女を婚約者にすると言い出したりと、その手に堕ちかかっているようだ。
下の弟二人も興味津々のようで、「すごい! すごい人が来ましたよ、モーリス兄上! 魅惑のボディですよ!」「マクシム、安心しろ。俺が彼女をお前の義姉にしてやる!」「僕がプロポーズするので黙っていてください!」「あのもちもちは俺のものだ!」「僕が彼女を体から幸せにするんです!」と下衆な会話を繰り広げて、王妃二人に連行されていた。あの二人は生き方を省みたほうがいい。
とにかく、最後の砦は、きっとミゲルだ。
そのミゲルをあんなふうにもちもちの体で誘惑してくるなど、なんて危険な存在なのだろう。
(何を企んでいるんだ!)