敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
昨日、それとなく彼女の王子妃教育を行う教師団のチーフ、教師フィフスに話を聞いたところ、彼女は呆れた顔をしてミゲルを出迎えた。
「あなた方はもう……これで七人目ですよ……」
「七人目?」
「いえ。……ヴィオレッタ様はとても優秀です。正直、すごい才能ですよ。彼女の頭はどうなっているんでしょう」
「え?」
フィフス曰く、ヴィオレッタはほとんどノートを取らない。
静かに授業を聞き、いくつか質問をし、少し瞑想するように目を閉じると、にっこり笑って「ありがとう」と言うのだ。
初めは授業を真面目に受けていないのかと思い、その場で授業内容に関する試験を行ったが、驚くことに、ヴィオレッタは授業の内容を全て把握していたのだという。
国語、外国語、歴史、マナーなどの暗記系の科目のみならず、数学や物理の思考訓練が必要な科目ですら、そうらしい。
「見稽古……とでも言うのでしょうか。彼女は、授業中、瞬きをしているのか不思議なくらいの様子で、私達を見て、聞いています。ものすごい集中力です」
「彼女が、そんな……」
「彼女は逸材ですよ。これで判断力が伴うのであれば、まさに王妃の器にふさわしいかと」
いや、王妃よりも研究者になったほうが国のためなのでは……と呟くフィフスに、ミゲルは何も言えなかった。
(それだけの逸材を、なぜヴィンセント王国は我が国によこしたんだ)