敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
だ、だめだ、こんなことは。
この女は、ヴィオレッタは、兄マイケルの婚約者になるはずの女性だ。
いくら美しくても、魅力的でも、兄の婚約者候補と、こんなことをしてはいけない。
だというのに、体が言うことをきかない。
ギュッと目をつぶったミゲルの耳元に、「にゃ?」という声が聞こえて、それからなんと、彼女はミゲルの耳をぺろりと舐めたではないか!
その感触に、ミゲルは理性の八割がたが吹き飛ぶのを感じた。
「ヴィ、ヴィオレッタ……」
「なぅ?」
「あ、あなたは、私がそんなにも……」
心臓をドラムのようにドドドドドドと鳴らしながら、ミゲルが真っ赤な顔でおそるおそるそう尋ねると、ヴィオレッタはとても柔らかく顔を崩し、慈しむようにしてこくりと頷く。
ミゲルの心に優しく触れてくるその笑顔に、残りの二割の思考もどこかへ旅立ってしまった。
美しくて、愛らしくて、魅力的で、勤勉で、誰もに愛される女が、ミゲルを愛していると言っている。
彼の体を求めるかのように、誘惑してきているのだ。