敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。
憤り過ぎて、目頭が潤んでくる。
悔しくて、ぎゃふんと言わせてやりたくて、けれどもミゲルは、自分の中に生まれた感情がそれだけではないことに気が付いてしまった。
今まで直面したことがないような強烈な色香が、好意が、行為が、ミゲルの心を激しく揺さぶってくる。
ミゲルの矜持を踏みにじってくるそれが、悔しくて、心地よくて、なによりも熱い。
このまま、彼女を、ミゲルの手で。
そう思って、けれどもミゲルはまだ、踏みとどまった。
目の前の彼女は、兄の婚約者候補だ。兄自身が彼女と婚約すると言っていたことから、きっとそれは形ばかりのものではなく、彼が望んでのことなのだ。
そこに恋愛感情があるのかどうかはまだわからないが、横からミゲルが、尊敬する兄の計画を邪魔するなんでことは――。
顔を歪めながら逡巡するミゲルを動かしたのは、やはりヴィオレッタだった。
彼女はその小さな手を、ミゲルの頬にそっと添える。
そのやわい感触が、細い指が、ミゲルに彼女の女を感じさせてくる。
「にゃん」
慰めるような仕草で、ふふっと笑った彼女に、ミゲルの最後の糸が切れた。
「――ヴィオレッタ!!!」