敵国から嫁いできた悪役王女……のつもりだったのですが、めちゃくちゃ大事にされている上に、契約結婚になるようです。


 勢いよく彼女に覆いかぶさる。
 柔らかい感触に、その心地よい香りに、ミゲルは理性を手放した。

 頭を駆け巡るのは、これからどうやって彼女を攻め落としていくか、それだけだ。

 これから彼女の体に触れて、その余裕の顔を散々に乱して、そのぽってりとした唇に触れて――。







「…………ミゲル?」

 キィ、と開いた扉が揺れる音がして、ミゲルは真っ白になった。
 油を差し忘れたブリキ人形のように、ギギギギ、と顔を上げて扉の方をみると、そこにはミゲルの愛猫を胸に抱いた、寝間着姿の兄の姿があった。

「何をしている?」

 絶対零度のその声音に、氷のような視線に、ミゲルは言葉もない。
 しかも、彼の体の下から、「にゃん?」という愛らしい声が聞こえるのが、またよくない。

 そして、この凍てついた空気の中、空気を読まずに声を漏らした者がもう一人いた。

「あらあら。ミゲル殿下は、野獣だったのですね」

 声を発したのは、ミゲルの愛猫である。
 ギギギギ、とそちらに視線を移すと、黒猫は兄マイケルの腕の中でくつろぎながら、にたりとその金色の瞳を細めた。

「ミゲル殿下の、えっち」


 ミゲルは気絶した。


 とても柔らかい感触がした。

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