私の運命の人
後輩
八月一日に誕生日を迎え、私は十八歳になった。
つまりは成人したことになる。

(もう成人だなんて、信じられない。こんなのでいいのかな?)

高校生ということもあり実感がないけれど、とにかく日々を精いっぱい大切に過ごそうと気持ちを新たにした。

「優里、誕生日おめでとう!」

翌週に生徒会の定例会があり、広香が真っ先にお祝いしてくれる。

「はい、プレゼント。女子力アップのコスメとアロマグッズ。今年こそは運命の人に会えますように」
「ありがとう、広香」

橋口くんや後輩たちも、口々に祝福してくれた。
会議のあと、橋口くんが私へのお祝いだと言って自動販売機でアイスクリームを買ってくれる。

「みんなもおごってやるぞー。好きなの選べ」
「いいんですか? やったー!」

賑やかに皆でアイスクリームを味わった。

「優里先輩、もしお時間あれば書紀の引き継ぎをお願いできますか? 俺、次の定例会は部活の試合で来られないので」

次期書紀の二年生の坂井くんに訊かれて私は頷く。

「うん、わかった。じゃあ三十木先生に声かけてから生徒会室に戻ろうか」

私はアイスクリームを食べ終えると「橋口くん、ごちそうさまでした。みんな、またね」と手を振って別れ、坂井くんと社会科準備室に向かう。

「そう言えば三十路先生、無事に三十路になったみたいですよ。七月が誕生日だったらしくて」
「そうなんだ。って、これから会うのに三十路先生って呼んじゃいそう」
「俺、呼んじゃってますよ。でも普通に『はい』って返事してくれます。まあ、みそじとみそぎは、はっきり言って聞き分けられないでしょうけどね」
「案外気づかれてるかもよ? 気をつけないと。みそぎ、みそぎ……」

そう呟いて社会科準備室に入ったというのに、私は「三十路先生」と声をかけてしまった。
しかもそのあとに「あっ……」と動揺までしてしまい、坂井くんに、ぷっと笑われる始末。

「はい、何ですか?」

三十木先生は敢えてなのか、サラリと受け流してくれた。
眼鏡をかけた先生の表情はいつもと何ら変わりない。

「すみません。生徒会の定例会は終わったのですが、書紀の引き継ぎをしたいので私と坂井くんはこれから少し残ります」
「わかりました、お疲れ様です」

「それでは失礼いたします」と言って部屋をあとにすると、坂井くんは楽しそうに笑い出した。

「優里先輩って前から思ってたんですけど、ちょっとおっちょこちょいですよね?」
「えっ、そんなことないよ」
「でもあんなにみそぎみそぎって言ってたのに、先生を前にしたらはっきり三十路って言ってましたよ」
「やっぱり? 気づかれたかな」
「でしょうね」

ううっ……と私は顔をしかめる。

「大丈夫ですって。俺、三十路先生が担任なんですけど、クラスのみんなもそう呼んでますから」
「そうなの? 坂井くん、三十木先生のクラスなんだ。先生っていつもあんな感じで変わらないの?」
「はい。前にホームルーム中にでっかいクモが出て女子がキャー!って逃げ回ってたら、三十路先生が素手でハシッと捕まえて窓から逃してました。涼しい顔して」
「あー、なんか想像つく。落ち着いてるというか、達観してるよね」
「ですね、仙人みたい。俺、今度から三十路仙人って呼ぼうかな」
「あはは! さすがにバレるよ、それは」

笑いながら生徒会室に戻り、早速二人で引き継ぎを始めた。
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