私の運命の人
それから三日後に、坂井くんと同じシフトになった。

「おお、先輩が復帰してる」
「戻って来ましたよー。お留守番ありがとう」
「いいえー。立派に育ちましたよ」
「ふふ、そうだってね。真由子さんが言ってた」

その日は土曜日で、開店からずっと客足が途絶えず忙しい。
二台あるクレープ台に並んで、私と坂井くんはひたすらクレープを焼き続けた。

「本当だ、坂井くんすっごく上手になってる」
「でしょ。俺、ハマっちゃって。クレープ作るのめっちゃ楽しいです」
「そうなんだ。よかった」

私と坂井くんがクレープの担当だと回転が速くて助かる、と真由子さんが笑い、私たちは競うように次々と焼き上げた。
お客様も身を乗り出すようにして覗き込み「すごーい!」と感激している。

「やっぱり専門学校とかで習うんですか?」

そんな女子高生の質問に、私は思わず苦笑いした。

「全然そんなことないですよ。ここに来て初めて教わりました」
「そうなんですね。職人技みたいです」
「ありがとうございます」
「お兄さんが作ってるの、すっごくかっこいいです」

え、そっちかい!と私は自分がしゃべっていたことが恥ずかしくなった。

「ほら、坂井くん。なんかリップサービスして」
「ええ? 無理ですよ」
「じゃあ、トンボくるくる回したりスパチュラを大げさにシャシャッてさばいて」
「俺、パフォーマーじゃないんですけど」
「いいから、ほら」

坂井くんは渋々といった感じで、トンボをくるっと持ち換えたりスパチュラで生地をすばやくヒラリとはがして裏返す。

「すっごーい!」

女の子たちが手を叩いてカシャカシャと写真を撮った。

「顔は隠すのでブログにアップしてもいいですか?」
「まあ、身バレしなければ」
「やった! ありがとうございます」

店内のテーブルに着くと、クレープを食べながら早速女の子たちはSNSに投稿したようだ。

「おおー、早速いいね! がたくさん」
「コメントもついた。どこのお店? だって」

女の子たちは顔を上げて、「あのー、お店の名前書いてもいいですか?」と訊いてくる。
真由子さんがテーブルに歩み寄った。

「動画を観させてもらえますか? 問題なければ書いていただいて大丈夫です」
「はい、これです」

再生された動画を確認すると、真由子さんは「ありがとうございます」と笑顔で言う。

「店名を載せていただいて大丈夫ですが、店員の名前は書かないでくださいね」
「はーい、わかりましたー」

その後も女の子たちは顔を寄せ合って楽しそうにクレープを食べる写真を撮り合っていた。
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