気難しい売れっ子作家の契約妻になりました 〜私にだけは、心を開いているそうですが……?〜
「あぁ……ごめん。なんでもないよ」
冬田さんに『お疲れ様です。ゆっくり休んでください』と返信をすれば、またブブッとスマホが振動する。けれど、優に話しかけられたからスマホをロッカーに入れて鍵をかけた。ここでは、スマホを持っての勤務は禁止されているからだ。
「ふぅん? 彼氏とのやりとりはそんなに楽しいかね~」
「へっ!? 彼氏!?」
優の言葉に、パチパチと瞬きが増える。私に彼氏はいない。彼氏いない歴イコール年齢というやつである。
「え? 彼氏じゃないの?」
「ち、違うよ~。ビックリした。そんなこと言うから」
「違うんだ。いつも、にやにやしながら返信してるから、てっきり彼氏だと思ってたのに」
優にそう言われると、冬田さんとの返信でそんなだらしない顔をしていたんだと口角をきゅっと締めた。私が個人的にメッセージで頻繁にやりとりをするのは、冬田さんだけだ。
「へぇ。まぁ良いや。そろそろレジ行こー」
「うん。そうだね」
優が椅子から立ち上がり、ロッカーにスマホを入れる。
私は朝から夕方まで寺川通便で正社員として働き、午後七時から十時までの三時間は家の近くのスーパーでアルバイトをしている。ここまで働いているのには、理由がある。私は今、父の弟夫婦――叔父夫婦の家で暮らしているからだ。