気難しい売れっ子作家の契約妻になりました 〜私にだけは、心を開いているそうですが……?〜

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 それは、私が入社して一年が経った頃。配達はもう一人で回れるようになっていたけれど、集荷だけは、なぜか一度も入ったことのないコースがあった。それをふと秋山さんに聞いてみたら、苦笑いをされてしまったのだけれど、秋山さんの役職代理の社員から「入ってみる? 三コース」と言われ、二つ返事で了承した。
 そんなに難しいのかな、と思っていたのだが、他のコースと遜色ない。強いて言うなら、似ている建物が多くて道が複雑ということくらい。
 今日も平和に終わりそうだなぁ、なんて思っていたら最後の集荷先である冬田さんの家へ向かった。
 決まった曜日や時間に伺う集荷先を、定時集荷と呼ぶ。定時集荷というのは、会社へ訪ねることが多く、個人宅へ行くのは珍しい。そして、冬田さんの家は分かりやすかった。この辺りで一番背の高いタワーマンションで、しかも最上階だったからだ。
(わ……すご。私、タワマンの最上階って初めてだ……)
 この仕事をしていなければ、一生行くことはなかっただろう。オートロックで、呼び出す部屋の番号を入力すれば、無言でスッと自動ドアが開く。
(は……入って良いんだよね……!?)
 そう戸惑った。
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